全員が相続放棄をしたら財産はどうなるか

文責:所長 弁護士 湯沢和紘

最終更新日:2024年05月24日

1 相続人全員が相続放棄をした場合の相続財産の扱い

 被相続人がお亡くなりになり、被相続人が債務超過に陥っていたなど、何らかのご事情によって相続人の方が全員相続放棄をするということもあります。

 相続人全員が相続放棄をすると、相続人不存在という状態になり、相続財産の所有者は誰もいないという状態になります。

 専門的に言えば、民法第951条に基づき、相続財産は、それ自体が法人となります。

 

 【参考条文】

 (相続財産法人の成立)

 第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

 一定の要件に当てはまる元相続人(相続放棄をした相続人)は、相続財産清算人が選任されるまでの間、相続財産を管理する責任を負います。

 相続人がいなくなってしまった相続財産を清算するためには、相続財産清算人選任申立てを行い、選任された相続財産清算人に引き渡す必要があります。

 以下、詳しく説明します。

2 相続財産の管理責任

 相続放棄を行った方は、放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、民法第940条第1項に基づき、相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならないとされます。

 

 【参考条文】

 第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

 「自己の財産におけるのと同一の注意」とは、相続財産の価値を積極的に棄損する行為をしないという程度の注意であると考えられます。

3 相続財産清算人選任申立て

 相続人がいなくなってしまった相続財産について、管理責任を負う元相続人の方がいない場合、理論的には、元相続人の方は相続財産に関与する必要はなくなると考えられます。

 もっとも、倒壊しそうな自宅建物がある場合や、草木が伸びて近隣住民に危害をおよぼしそうな場合には、民法第952条第1項に基づき、家庭裁判所に対して相続財産清算人選任申立てをし、相続財産の処分を任せることができます。

 

 【参考条文】

 (相続財産の清算人の選任)

 第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。

PageTop