相続放棄と入院費の支払い

文責:所長 弁護士 湯沢和紘

最終更新日:2024年05月29日

1 相続放棄するなら入院費は支払わない方がいい

 相続放棄を考えている場合、被相続人(亡くなった方)の入院費の請求に対してどう対応すればよいでしょうか。

 相続放棄をすれば、相続人は、被相続人自身が支払わなければならない入院費の支払義務を相続しません。

 そのため、3で後述する場合以外は、入院費の請求がきても支払わないという対応をするのが良いでしょう。

2 被相続人の預貯金から入院費を支払ってはいけない

 お世話になった病院に対して支払わないことを心苦しく感じる方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、入院費を支払うと相続放棄できなくなることもあるので、注意が必要です。

 

⑴ 被相続人の預貯金から支払う場合

 被相続人の預貯金は相続財産に当たります。

 相続財産を処分すると、相続の単純承認があったとみなされて相続放棄が認められません。

 亡くなった方の預貯金を入院費に支払うことは、相続財産の処分に当たるので、相続放棄が認められなくなる事由となります。

 

⑵ 相続人の預貯金から支払う場合

 相続放棄すれば、そもそも入院費を支払う義務はありません。

 どうしても支払いたいときは、被相続人の財産には手をつけず、自分の預貯金から支払うべきです。

 自分の預貯金から支払う分には相続放棄に影響はありません。

3 相続放棄しても入院費を支払わなければならない場合

⑴ 保証人となっている場合

 被相続人が入院する際、誓約書の記載が求められ、親族等が保証人となる署名をする場合があります。

 保証人となっている場合は保証人の立場で入院費の支払義務を負うので、相続放棄しても入院費を支払わなければなりません。

 

⑵ 配偶者の場合

 配偶者が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の配偶者は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負います(民法761条本文)。

 病院との間で交わした入院に関する契約も、ここでいう「日常の家事に関」する法律行為に該当する場合があり、その場合は被相続人の配偶者は相続放棄しても入院費を支払う義務があります。

4 横浜市で相続放棄をお考えの方へ

 相続放棄を検討する場合、入院費を含めたさまざまな請求について、支払ってよいか否かの判断は専門的な知識が必要な場合が多いです。

 ご自身で判断して行動すると相続放棄が認められなくなるおそれもあります。

 相続放棄をお考えの方は、弁護士法人心 横浜法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

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